書籍を出して半年がたったので、心境や環境の変化について整理しました

cross-Xの古嶋です。DX戦略立案・推進やデータ・AI活用の支援をしています。
今回のブログでは、書籍出版から半年ほど経過した現在、私自身の心境や、私を取り巻く環境にどのような変化があったか、振り返りを兼ねて備忘までに書き留めます。
出版した書籍について
2022年6月に『DXの実務―戦略と技術をつなぐノウハウと企画から実装までのロードマップ』という書籍を出しました。
この本は、簡単にまとめるとDXを推進するための戦略論や実践論を体系化した、DXに関わる方々に実務で役立てていただきたい「ハンドブック」です。
多くの企業では、DXの実務は下図のように「戦略」と「技術」が分断しているケースが非常に多いと思います。

なので、その分断した状態を接続するために必要な方法論やノウハウを、「技術者ではない方々向け」に書いたのが本書です。

具体的な考察についてはこちらを御覧ください。
このブログでは、書籍を出して半年が経って現在に至るまで、私に起きた変化について書いていきます。
仕事に対する考え方の変化
稚拙かもしれませんが、「やったことがないことこそ、やってみることが大事」だと思いました。
何にせよ、やったことのない「大きなこと」の前には無数の「小さなこと」の積み上げが必要で、その積み上げをしっかりとやり切ることが大事なのかなと、あらためて感じました。
今となっては、「新しい取り組みを進めた先に何があるかは分からないけど、何かしら面白いことがあるんじゃないか?」という根拠のない感覚と期待を持てています。
また、出版をきっかけに、自分の考えを発信する機会が増えました。
これまでの職業柄、考えをまとめ、資料化し、プレゼンして合意形成するといったプロセスを何百回も繰り返してきましたが、不特定多数の方々に情報を発信することは、新たなチャレンジでした。
SNSのような媒体だと伝えられる情報量に制約があり、思わぬ誤解を招くこともありそうですが、書籍だったらある程度、体系的に自分が伝えたい内容を提示出来ると分かりました。
その分、書き上げるのが本当に大変でした。
たった一つのコンセプトをしっかりと伝えるためだけに、これだけの情報収集と取捨選択、言語化、可視化が必要なのかと、今思うと大変な毎日でした。

また、執筆活動を通じて「本」というものに対する考え方が変わりました。
特に、出版社の方々が1冊の本を仕上げ、書店に並べるまでに膨大な労力を費やすことや、執筆する方々がどれだけ情報収集・整理・考察を繰り返して1冊の本を書き上げているのか、身をもって知りました。
発信することの副次的な効果
もう一つの大きな考え方の変化は、「意思を伝えると同士が集まる」ということかなと思います。
これはなんとなく頭ではわかっていた気もしますが、本を出してみて改めて強く実感しました。
そもそもDXという領域が新しく、日々新しいソリューションが登場してはWeb上を賑わせています。
ただ、その中でも恐らく“流派”のようなものがあって、大事だと思うことが少しずつ違う気がしています。

例えば、一般的なDX推進では各分野から専門人材を集め、プロジェクトチームを編成して実務が推進されます。
この点、私はDXを総合格闘技のように考え、各メンバーは一定の分野に閉じたスペシャリストではなく、ビジネスやITシステム、AIなど広範囲にわたって専門性を持つことが重要だと常々発信しています。
ここに正解は存在せず、大きく見解が分かれるところでしょう。
こういった意見も、発信し続けていると共感を呼び、いろんなところで同士と出会えるきっかけとなりました。
最近は、大小さまざまなテーマで新しいことにチャレンジする機会に恵まれています。
新しい分野では先行事例やルールがほとんど無く、そこで「こうするべきだ」と自分の考えを発信することは、大きな勇気や強い信念が必要だと思います。
書籍の出版から現在に至るまでは、勇気や信念のもと、これまで経験したことのない判断の連続でした。
それでも自分の感性や審美眼のようなものを信じて、勇気を持って発信し続けることが重要なのかなと、強く思いました。
ただし、その内容は何度も考察と熟議を繰り返したもので、少なからず誰かにとって役に立つもの、何らかの意味があるものに昇華させたうえで発信していくべきだと、自戒の念を記しておきます。
歴史と経験、どちらが重要?

私は元メジャーリーガーのイチロー氏の大ファンなのですが、彼の引退会見の言葉の中で、都度読み返す一節があります。
会見を聞きながらメモを取ったので若干発言と異なる部分もあるかもしれませんが、大凡このような内容でした。
「本を読んだり情報をとっても、『体験』しないと自分からは生まれない。その体験は未来の自分にとって大きな支えになる。だから、辛いこと、しんどいことから逃げず、エネルギーのある元気なときにそれに立ち向かっていくことは、人として、重要なことだと思います。」
・・・何度読み返しても、言葉の力に圧倒されます。
これを長い会見の最後に、よどみなく言い切るところに、イチロー氏の人間としての大きさや深さが色濃く表れていると思います。
よく、「賢者は歴史に学ぶ」と言いますが、恐らくその「賢者」自身も、相当な「経験」を積んだ上で、歴史に学んでいるんだと思います。
結局、この世界は経験してみなければ分からないことばかりだと思います。
どれだけ自分の頭と心と身体を動かして経験を積み上げられるかが、イチロー氏の言う通り、「人として重要なこと」なのかなと思います。
今回のブログは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。