ChatGPTが変える世界〜機械学習システム開発は、今後いかにして推進するべきか?
ダイヤモンド・オンラインで連載第9回目が公開されました。
今回のテーマは「機械学習システムとDX」です。
前回第8回の「AIモデル」に続き、今回は「機械学習システム」をテーマにしています。
この2回を通じて、AIをより身近に感じて頂けたらと思いつつ、できる限り丁寧に書きました。
ここで、本稿執筆の背景を少し書かせてください。
Open AIがいよいよChatGPTのAPI提供を発表しました。
併せてWhisperのAPIも提供を発表しています。
Whisperとは、Open AIが開発した汎用的かつ高精度の音声認識モデルです。
これまでのOpen AI APIで提供していた大規模言語モデルのバージョンはGPT-3でしたが、
今回ようやくChatGPTで採用されているGPT-3.5-turboがAPIを通じて利用可能になりました。
利用料も破格の安さです。
こういった高精度AIのAPIが誰でも利用可能になるという流れは、今後も加速していくと思います。
同時に、DXの領域において大きな“転換点”となると思います。
機械学習システムの競争優位性の最たるものは、つまるところ「精度」に帰着すると思います。
つまり、予測結果がどのくらい妥当かが、機械学習システムの優劣を大きく左右します。
その精度を左右するのは、機械学習システムの中核とも言えるAIモデルです。
すると、精度で他のAIに劣ると、ユーザーからすると精度の低いAIを利用する価値は無い、と結論づけても仕方のないことです。
よって、ユーザーは精度が少しでも高いAIを選択することになります。
この点、ChatGPTに類する他の対話型AIは、「ChatGPTに精度で勝てるか?」が競争優位性を評価する重要な指標になってしまいます。
もちろん、特定ドメインを土俵にして優劣を評価すれば勝てる可能性もありますが、現状のトレンドを見る限り、劣勢となることが想定されます。
上記のリリースの通り、ChatGPTで用いられている大規模言語モデルが誰でも利用可能になってしまうと、もはやこれを使う以外の手はない、という状況になっていくと思います。
そもそも、機械学習システムの開発と運用では、広範囲にわたる技術要素を総動員して開発・運用を進めるという難しさがあります。
例えば、予測精度向上のための特徴量エンジニアリングや、AIモデルの継続的な訓練・評価、ユーザー体験を高めるためのUI改善、大規模なデータの利用を可能にするためのデータ基盤構築と保守・運用体制の整備など、です。
さらに、AIモデルは「作ってみなければ上手くいくか分からない」というクリティカルな実務課題があります。
であれば、最初から高精度が保障されているAIモデルのAPIを使う方が利点が多い、という判断も妥当だと個人的に思います。
UIの強化など、他の開発に集中できるというメリットも享受できます。
そういった、「イチから開発しなくても、これを使えば良い」という高精度AIが、これからどんどん世に放たれていきます。
すると、イチからシステム全体を作り上げるのではなく、APIを用いて外部のAIモデルを活用するというアプローチが、今後はかなり増えていきます。
これは、既存の各社の開発戦略に決定的に影響するでしょう。
となると、高精度のAIを開発できるかどうかよりも、
課題解決のための手段として、アクセス可能なAIを縦横無尽に利活用できるような人材が、今後は活躍するのではないか?
と想像します。
もちろん、その人材にはビジネス課題だけでなく各種AIの特性や技術面を、自ら作ることは出来なくとも、ある程度熟知していることが求められそうです。
その一貫として、そもそも機械学習システムが全体としてどのような仕組みになっているかを知ることは、すごく有意義なことだと個人的に思います。
AIによる世の中の進化が著しい昨今ですが、本稿をきっかけに、AIを少しでも身近なものに感じて頂ければ幸いです。
よろしければぜひ御覧ください。