「DX」と「ロードマップ」の相性が悪い2つの理由
cross-Xの古嶋です。DX戦略立案・推進やデータ・AI活用の支援をしています。
ダイヤモンド・オンライン様に寄稿・連載している「DXの進化」、その第3回の内容について補足的な解説・コメントをしていきたいと思います。
DXとロードマップの相性
第3回の内容は「DXのロードマップ」…難しいテーマです。
そもそも論として、「DX」と「ロードマップ」は、相性最悪だと思います。計画的に仕事を進めるという考え方そのものと、相性が悪い。
にもかかわらず、DXではロードマップが至る所で量産されています。
なぜ、相性が悪いのか?
パッと思いつくところで、ポイントは2つ。
1つ目は、世の中の変化が激しすぎて、市場環境の見通しが立ちづらい中、計画通りに進めることが最良の策とは言い難い、ということです。
例えば、革命的なAIとして世間を賑わしているChatGPTの台頭を、半年前に予見出来ていたかというと、大多数は気づきもしなかったのではないかと思います。
革新的な技術の登場で一気に市場環境や競争優位性が激変する世界では、ロードマップのような計画重視のアプローチを従来どおりの慣性で進めることは、端的に言って大きなリスクだと思います。
また、ロードマップというものが経営全体に影響を与える位置づけである以上、影響範囲が殊更大きく、大いに再考の余地がある経営管理手法だと思います。
2つ目は、そもそもDX的なソリューションの実装が計画的な実務推進と馴染まないという点があると思います。
例えば、機械学習システムの開発・活用は、その成果は「やってみないと分からない」ものであり、計画的に効果を高め続けることを誰も保証出来ないことは既に周知の事実かと思います。
これを従来のITシステムのようにカチッと要件通りに動くものと考えてしまうと、ウォーターフォール型の考え方がそのまま踏襲されてしまいがちです。
ロードマップに代わる、DX推進のアプローチ
上記2点以外にも色々と思うことはありますが、では、ロードマップに代替するアプローチとして、どのような手法を採用すべきか。
ここは、「小さく始めて、大きく育て、ビジョンに近づいていく」の一言に尽きると思います。
そもそも計画という手段を用いる理由は、会社のビジョンの実現です。
その実現が計画的に進めづらいことが明らかなのであれば、ビジョンに向かった仕事の進め方そのものを変えるしかありません。
(一方、「小さく始めて、大きく育てる」という部分の根拠は、次回以降の連載で詳述しているので割愛します。)
ロードマップという考え方を、この「育て方」という言葉に置き換えていきませんか?というのが、私が常々発信していることです。
そうすると、自ずと「ビジョン」の言語化や可視化がより一層重要になります。
また、何を育てるべきかを知るために、市場環境や競合他社の事例、関連技術、先端技術の理解により一層向き合う必要があります。
DXの実務の中では、成功よりも失敗が遥かに多いと思います。
そんな中でも「こうなっていきたい」というビジョンが組織全体で浸透し、そのテーマに沿って各種プロジェクトが創発的に生まれて、少しずつ歩みを進め、ビジョン実現に近づいていくことが、今風な「ロードマップ」なのかなと思います。
もちろん、このような経営的合意が取りづらいことは重々承知しています。
つらつらと書きましたが、第3回の記事は、そんなことを考えながら執筆しました。宜しければご一読ください。
今回は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました