DXの実務では、「論理的思考」を活かせてないケースが多いことについて

cross-Xの古嶋です。DX戦略立案・推進やデータ・AI活用の支援をしています。

ダイヤモンド・オンラインで連載第5回目が公開されました。

全10回の連載も、いよいよ折返しです。

今回のテーマは「DXの難易度を決める3つの要素」についてです。

難しい問題を、簡単な問題に

数年前、Google出身の友人と会話している際に「優秀なエンジニアとはどういう人を指すのだろうか?」という話題で盛り上がったことがあります。

色々な視点はありますが、友人曰く「結局、難しい問題を簡単な問題に分解・帰着させられるエンジニアは、やっぱり優秀だよね」とのことでした。

この「簡単な問題に分解する」という思考プロセスは、まさにロジカルシンキングが要求されるところです。

しかし、DXでは特にこの「分解」という作業が不十分なケースを非常によく見かけます。

例えば、「DXとは何か?」というテーマが議論されているところで、「ITシステムを導入するだけではダメで、変革を生み出すことがDXだ」という主張をよく見かけます。

さも正論を言っているように見えますが、私からすると「あ、また問題を『分解』出来てない」と思ってしまいます。

「変革を生み出すことがDXだ」という考えでは、設定された問題を簡単にするどころか、余計に難しくしてしまっています。

私としては、そのような意見に価値があるとはあまり思えません。

変革という言葉の定義にもよりますが、DXとはそもそもデータやAIを活用するものであり、であれば自ずとITシステムの導入は大前提となるでしょう。

そのステップを軽視しているかのような見解に基づいてプロジェクトを主導すると、多くのケースで現場は混乱します。

というか、混乱している状況を多く見てきました。

解決可能な問題設定が、論理的思考の“見せ所”

ITシステムの導入だって、十分過ぎるほどの「変革」です。

なぜなら、これまでの業務を一部「システムに置き換える」という作業だけでも、膨大な労力と変更プロセスが求められるからです。

ITシステムは、人の言うことを聞いてくれるわけではなく、あらかじめ指定されたタスクを処理するだけです。

すると、人間側もある程度はシステムの仕様に合わせた業務スタイルに変更しなければならないでしょう。

つまり、これまでのやり方を「変化」させる必要があります。

DXには”Transform”の意味合いが込められていますが、この変革を実現する前に、「変化」しなければならないポイントが多数存在します。

これらを1個ずつ変えていかなければ、変革には届かない。「変革」と「変化」では、意味が全く違います。

では、変化させるべきポイントをどのように見極めるか?…これが、DXの課題解決における「難しい問題を分解する」ための第一歩です。

この「分解」の粒度が粗かったり漏れていたりすると、後からさまざまな問題が生じます。

無自覚・無批判な状態に陥らないために

ただ、DXの性質上、プロジェクトの影響範囲の広さやIT、AI活用で要求される専門性、未経験領域への挑戦など、問題を「分解」するには多彩なスキル・ノウハウが求められます。

よって、この「分解」というタスクそのものが困難となるのは仕方ないことであり、座学や実践を通じて学び続けたいところです。

一方、問題なのはこういった状況に対して「無自覚」であることだと思います。

なんとなくトレンドに引っ張られたり、変革といった言葉に浮足立ってDXに関わっていると、多くの関係者を疲弊させてしまうことになるでしょう。

この点、翻弄されて疲弊した経験のある方も、今となっては少なくないのではないでしょうか。

…と、偉そうなことを言いつつ、この領域に身を置く立場としてはそうならないよう、自己研鑽に励み続けなければならないなぁと、自戒の念を込めて本稿を書きました。

よろしければご覧ください。

https://diamond.jp/articles/-/316901